ビジネスパーソンに伝えたい、社会課題解決に取り組むための「SDGs的アプローチとCSV的アプローチ」

ビジネスパーソンの皆様は、「社会貢献」や「社会課題の解決」と聞いたときに、どんな印象をお持ちでしょうか?
社会から信頼を得るために仕方なくやるもの?
事業部ではなくCSR部の取り組むこと?
筆者は「社会課題解決はビジネスマターだ」と考えており、これからのビジネスには欠かせないものだと考えています。

しかしビジネスパーソンの皆様の中には、いまいち自分ごととして認識できない方も多いのではないでしょうか?

そんな方に、Webマーケティング業界に従事し、CSV案件をサブプロデューサー・メインディレクター(事業戦略設計から企画立案、実際のWebサイトの作成までを一括でサポート)として経験した筆者から、自分ごとと認識するヒントとしていただくために、筆者の考える「SDGs的アプローチ」と「CSV的アプローチ」について、ご紹介させていただきます。

目次

1.前提知識のご紹介
1-1.SDGs(Sustainable Development Goals・持続可能な開発目標)
1-2.CSV(Creating Shared Value・共通価値の創造)
1-2-1.CSRとの関係
1-2-2.CSRの分類やCSVへの変遷
1-3.1のまとめ

2.それぞれの成り立ち
2-1.MDGsという発展途上国の課題を解決するために生み出された「SDGs」
2-2.資本主義の課題となった「社会」と「企業」の乖離、「社会や環境の利益」と「企業利益」のトレードオフを解決するために生み出された「CSV」
2-3.2のまとめ

3.自分ごと化するためのストーリー

4.事例
4-1.SDGs
4-2.CSV

5.まとめ

まずは、SDGsとCSVの概要をご説明いたします。ご存じの方は、次の章に進んでいただいて構いません。

1-1.SDGs(Sustainable Development Goals・持続可能な開発目標)

2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標のことです。17のゴール・169のターゲットから構成されています。地球上の誰一人取り残さない(Leave no one behind)ということもSDGsのメインテーマとなっています。
※持続可能性とは現在の社会、暮らし、経済、経営などを将来に渡って「維持し、継続できる」という定義です。

1-2.CSV(Creating Shared Value・共通価値の創造)

米ハーバード大・マイケルポーター氏らが提案した経営手法のことです。組織が持つ資産および専門性によって、社会的価値と企業的価値を同時に事業で創出しようとする概念のことです。

1-2-1.CSRとの関係

CSR(Corporate Social Responsibility)とは似て、非なる概念です。
次で詳しく説明します。

1-2-2.CSRの分類やCSVへの変遷

①ヨーロッパ式CSR
「事業プロセスや製品サービスによって、社会や環境にマイナスの価値をもたらさないことが、企業の社会に対する責任である」という考えに特徴が見られます。

②米、日本式CSR
チャリティやフィランソロピー(慈善活動)であり、事業で出た社会的損失をボランティアで補うという考えに特徴が見られます。

③2006年マイケルポーター氏らによる、競争優位のCSR戦略
従来のように、企業が公害などのネガティブな(マイナスの)インパクトを与える存在であるがゆえに贖罪をしなければならないという「受動的CSR」の考えから脱却して、企業は社会と一体になって双方にとってプラスの価値をつくり出す存在になるべきだと主張しています。
それが「共通価値の創造(Creating Shared Value)」の概念へ発展していきます。

1のまとめ

・CSVは本業で、CSRは企業の本業以外での社会的活動です。
・CSVはCSRや資本主義経済の課題を解決するために考えられた概念といえます。

2-1.MDGsという発展途上国の課題を解決するために生み出された「SDGs」

皆様は、SDGsがMDGsの後継であることはご存知でしょうか?(なんだか、略字が多い記事になっていますね笑。)MDGsとはMillennium Development Goalsの略で、日本語では、そのままミレニアム開発目標と訳されます。2000年9月、ニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットにて採択された国際的な取り決めです。ここでは、細かい内容は割愛させていただきますが、端的に表現すると、途上国の開発問題に対して、先進国が援助しようという内容になっています。

そして、SDGsは、このMDGsで積み残した課題を解決するために生み出されました。先進国の課題解決も目的としているため、「社会のために」を立脚点としているという姿勢がうかがえます。

2-2.資本主義の課題となった「社会」と「企業」の乖離、「社会や環境の利益」と「企業利益」のトレードオフを解決するために生み出された「CSV」

一方、CSVの前身は、CSRです。CSVとCSRは全く違う概念ではありますが、「企業」という組織の課題を解決するために作られたという点では共通しています。

2-3.2のまとめ

社会課題を解決するために生まれたSDGs。一方、企業課題を解決するために生み出されたCSV。この成り立ちを押さえておくことは、皆様が社会課題に向き合うときの違和感をなくしてくれるカギになると筆者は考えています。

3.自分ごと化するためのストーリー

ポイントは、以下の2点です。
・まずはSDGsから考える
・違和感があれば、CSVから考える

なぜSDGsから考えるかというと、理由は2つあります。

1つ目にSDGsは、VUCA(VUCAとは、Volatility・変動性、Uncertainty・不確実性、Complexity・複雑性、Ambiguity・曖昧性の4つの単語の頭文字をとった造語。読み方はブーカ。)時代のアプローチとして適切とされているバックキャスティングという手法を使っているからです。つまり、「あるべき未来を描き、そこに必要なステップを考えて」アプローチしていきます。

2つ目は、SDGsの理念が、「Leave no one behind」であるからです。筆者の解釈として、先進国といわれている日本人の筆者にとっては、「宇宙船地球号」という感覚がなじみます。地球に住んでいる人を誰1人取り残さないように、地球に住んでいる誰もが協力する。誰1人として、SDGsに取り組まなくて良い人はいないのですから、SDGs的アプローチから始めてみよう、という考えです。

しかし、ビジネスパーソンである皆様は、ここが悩みの種なのではないか?と筆者は考えています。自分が属している組織、事業をいきなりSDGsに合わせるのは、相当なリスクや痛みを伴うと思います。ましてや、概念の階層が高い経営理念や中長期戦略を変え、社員にそれを浸透させていくことを迫られているわけですから、違和感を感じるわけです。

そこで筆者が一番伝えたいのが、CSV的アプローチです。言葉を選ばなければ、「株主利益を最大化のために社会課題に取り組む」ぐらいの姿勢から社会課題に向き合い始めても良いのでは、と考えます。企業が生き残るのは、経済的利益が必要だという考えが、現代の主流です。(そうではない考えや概念があるのは筆者も理解しています。)そういった現代では、自分達の組織が生き残るための戦略として社会課題に取り組む、と考えると、少し自分ごととして捉えられるような気がしてきませんか?

ただし、CSVウォッシュになることは絶対にあってはなりません。CSVウォッシュは、社会課題解決に十分な取り組みをしていないにも関わず、あたかも社会に貢献しているように謳うことを指します。こういった行為はそもそも許されることではありませんし、SNSが発展した現代において、消費者はウォッシュに非常に敏感です。炎上する原因にもなりますし、組織の信頼を大きく下げることになりますので注意が必要です。

また社会課題解決を謳うときは、謙虚な姿勢で、1つの側面から見ると社会課題を解決している、ぐらいの温度感で伝えることが重要です。この辺りは、自社のCSR部の方などと議論を交わしながら企画すると良いと思います。

この章では、事例を紹介していきます!

4-1.SDGs

株式会社ジモティーは、2011年に創立した会社で、経営理念に「地域の今を可視化して、人と人の未来をつなぐ」を掲げています。地元の情報を集めて、利用者が不要になったものをお金をかけずに誰かにあげたり、人を募集したりできるWebサービスを展開しています。経営理念やコーポレートサイトからもわかるように、経営理念を社会課題解決に設定し、SDGs型ともいえる事業を展開しています。従業員数は単体で45人程となっています。会社の規模に関わらず、SDGs的アプローチはできるのです。

4-2.CSV

キリンホールディングス株式会社は、2013年11月に、東日本大震災で大きな被害を負った福島県の生産者を応援するために、氷結・和梨バージョンを期間限定で発売していました。また2015年3月には、福島産の桃でつくった氷結・福島産桃を限定出荷で発売して、継続的な事業として展開していました。この事業だけを見るとSDGs的アプローチのような感じもするのですが、この時に立てられていた戦略は、筆者がお伝えしたい、CSV的アプローチです。以下、野村総合研究所のレポートからの抜粋です。

(社会にとっての価値と自社にとっての価値)
CSVをキリン流に言えば「社会課題への取り組みによる社会価値の創造と企業の成長を両立させる経営コンセプト」で、「社会をよくして、企業(キリン)も強くなる」ということになる。
引用:CSV事業の先進事例分析を通じた支援の枠組みに関する調査研究事業報告書(P.97)

この企業(キリン)も強くなるという点がCSVらしいアプローチだと解釈しています。始めは「自社の資産を使って、成長するために、社会課題に取り組む」というぐらいの姿勢で良いのだと思います。また、全ての事業をいきなりCSVに合わせなくても良く、既存事業の提供価値の再定義を行って、競争相手のいないブルーオーシャンでCSV型の事業を行うというのもビジネスにおいては有効な手法だと考えます。

・SDGs的アプローチ:2030年に解決しなければならない課題を、ビジネスの持つ創造性やイノベーションを使って解決する事業を行う。
・CSV的アプローチ:企業が生き残る戦略として、また、株主の利益最大化のために、ブルーオーシャンである社会課題領域に取り組む。

ビジネスでの社会課題の解決には、上記2つのアプローチがあり、どちらも正解と言えると筆者は考えます。つまり大事なのは、「皆様自身がどちらのアプローチを感覚として好むか判断すること」や「属している組織にどちらがあっているか、組織を巻き込む際にどちらが響くか考えること」だと思います。また、立脚点が違うだけで、本質的には同じゴールを目指していますから、事業を進める中でも、両方の立脚点を上手に使い分けると良いと考えています。

この記事を読んでくださった方が、「ビジネスとして社会課題解決に取り組むこと」を身近に感じて、SDGsやCSVについてより深く知りたいと考えてくだされば幸いです。
最後に、筆者がおすすめする記事のURLも添付いたしますので、ご活用ください。

・SDGsのおすすめ
SDG Compass
・CSVのおすすめ
日立 CSV(共有価値の創造)が実現する競争力と社会課題解決の両立

参考

SDG Compass
日立 CSV(共有価値の創造)が実現する競争力と社会課題解決の両立
ジモティー コーポレートサイト
キリンホールディングス株式会社 コーポレートサイト

この記事を書いた人

澤邉 杜光

澤邉 杜光

日本大学 生物資源科学部 生物環境工学科卒。趣味は海外旅行。自慢は入社から一回もオフィスでの仕事経験がないこと(笑)。
個人FacebookアカウントURL:https://www.facebook.com/morimitsusawabe/

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