医療従事者が求めるHCPサイトとは

突然ですが、皆さん医療従事者サイトを閲覧されたことはありますか?

これまで、ECサイトや大手企業のコーポレートサイトなど、様々な業界のWebサイトを見てきましたが、メンバーズメディカルマーケティングカンパニーの案件を通じて、医療従事者向けサイト(以下HCPサイト)の経験を得たところ、HCPサイト(※)は見た目も内容も一般サイトと異なるものが多く、ユーザーへのアプローチ方法が違うことに気づきました。
今回は、皆さんがよく目にしている一般的なサイトと、HCPサイトの違いを紹介しつつ、HCPサイトの「あるべき」について考えていきたいと思います。

※HCPサイト
主に疾患の治療方法や製薬情報など、医師やそれに関わる医療関係者が閲覧するサイト。医療機関に勤務する医療関係者に向けた情報を掲載するサイトのため、ユーザーがサイトに訪れると、会員ログインが求められたり医療関係者か認証が必要なことが多いです。

一般的なECサイトとHCPサイトの比較

比較1:掲載情報の専門性

実際にHCPサイトを閲覧していると、「ALK陽性肺癌が脳転移した際の一次治療の選択肢」についての記事が目に留まりましたが、用語が専門的過ぎてさっぱり意味が分かりませんでした。一般ユーザーにとっては難しい情報が難しいまま掲載されていたのです。

どの業界においても、普通に生活していれば触れることのない、深く専門的な情報が飛び交っていました。
通常、これらの複雑な情報をユーザー目線で咀嚼し、分かりやすく整理してインターネットに公開します。例えば、商品開発部が時間とコストをかけて、成分を研究しつくして誕生した究極のプリン。本当だったら”成分表”の隅々まで見ていただきたいところですが「シルクのようなくちどけ」と、一言。誰にとっても分かりやすい表現で伝えています。

一方HCPサイトでは、このような魅力的なキャッチコピーではなく”成分表”が求められます。HCPサイトに訪れるユーザーの大部分は、疾患の治療方法や製薬情報を探しています。それは「風邪によく効く薬」のような抽象的な情報ではなく、「どのような成分が含まれていてどうして風邪に効くのか」という、深く専門的な生の情報を探しているのです。

つまり、一般的なECサイトとHCPサイトでは、求められる情報の専門性に大きな違いがあることがわかりました。

比較2:サイト訪問者の行動

いくつかのHCPサイトを閲覧していると、ある共通点に気づくことができました。それは、特定の製品に関するバナーがない(少ない)ということです。これは、法律によって医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関する広告規制があるため、当然のことではありますが、それだけでしょうか。

一般的なECサイトでは、期間限定のキャンペーンやおすすめの商品などの、企業側がユーザーに発信したい商品やサービスの訴求をよく目にします。それは、検索窓やメニューバーなどのエリアよりも大きく印象的に表現されていることが多いです。対して、HCPサイトに訪問した際に初めに目につくのは、検索窓や検索したい情報を分類したカテゴリを選択するエリアなど、訪れたユーザーが検索することを前提としたエリアです。そして次に製品に関する情報ですが、一般的なECサイトにあるような広告的表現ではなく、あくまで最新の情報が時系列順で表示される仕組みになっていました。

つまり、一般的なECサイトは特定の商品情報を「発信」する設計なのに対して、HCPサイトはユーザーが情報を「検索」する設計になっていて、前提としている「ユーザーの行動」が全く異なることが分かりました。情報を選択する主体が企業側かユーザー側かという部分に違いがあるのです。

HCPサイトの特徴

HCPサイトは医療関係者の目的と行動に基づき設計されている

専門知識を持つ医療関係者が利用するHCPサイト。その特徴は以下の通りでした。

  • 専門知識を有するユーザーに向けた、専門性の高い情報が掲載されている
  • サイト内検索を前提とした、情報を選択する主体がユーザー(医療関係者)

これらのサイトの特長から、医療関係者がHCPサイトに何を求めているかが見えてきました。ここからは、医療関係者がHCPサイトに何を求めていて、どんな目的で利用しているかを考えていきます。

医療関係者はHCPサイトで疾患の治療方法や製薬情報などを探しています。すでに十分な専門知識を有しているため、企業側が選択した特定の製品に関する情報は求めていません。

必要なのは、

  • 専門性の高い情報が確かにあること
  • 鮮度の高い最新情報が更新されていること

です。

つまり、医療関係者の目的は「治療に必要な正確な情報を取りこぼさない」ことではないかと考えました。そのためHCPサイトには、鮮度の高い「網羅的な専門情報」を掲載し、それらを「探しやすい仕組み」が求められています。

HCPサイトに足りないもの

先日、非常にタイミングがよく、実際に医療現場で働く知人の医師と会話する機会があり、いい機会だと思い、医師目線でHCPサイトに求めることについてお話をしてみました。

その医師は、

「現場医師は日々の業務で時間がなく、必要以上の情報収集ができない。そのため、求めている情報が確実にあるソースを利用する。例えば教科書で調べたり、先輩医師やMR(医療情報担当者)に直接伺うこともある。
HCPサイトも、検索性に優れていて最新情報のアナウンスもあるので便利だと思い活用していた。しかし、検索しても目的の情報がないことが何度かあり、あまり利用しなくなった。検索性や情報の鮮度で考えればHCPサイトのほうが他のソースよりも優れているとは感じる。」

と、話してくれました。

つまり、既存のHCPサイトも十分便利ではあるが、目的の情報が見つからないことがあると利用されなくなるのではないか。

さらに使いやすく

ここまで、実際のサイトや医師へのヒアリングを通して、HCPサイトの「あるべき」について考えてきました。

既存のHCPサイトも、ユーザー(医療関係者)の目的と行動に合わせた設計にはなっていて、よく考えられているなと感じました。しかし、実際に使う人の言葉を聞き、それでも満たせていなかったニーズに気づくことができました。

「目的の情報が見つからないことがあると利用されなくなる」という課題に気づき、さらにHCPサイトをより良くするにはどうすればいいか。具体的な方法を考えることができました。

オンラインMRを活用

医師は「見つからない”かも“しれない」という不安で利用しなくなっていきました。検索性に優れていて便利なHCPサイト。それだけのために利用されなくなってしまうのはもったいない。これからのHCPサイトに必要なのは「安心感」ではないでしょうか。

そこで、今回考えたのは「オンラインMRを活用」です。
製薬企業の顔であるMR(医療情報担当者)は業務において、医薬品の適正使用のための情報提供、収集、伝達を行っています。 サイト上にオンラインMRとのチャットサービスや面談の受けつけの仕組みがあれば、「見つからない”かも“しれない」が「見つからなくても聞ける」と変化するのではないかと思います。

さいごに

今回考えたアイデアだけでは、オンラインチャット上に常時専任者が待機することが難しかったり、まだまだ障壁も多く、考えることばかりですが、このようにサイトとサイトを比較することから、見えていなかった課題の発見やアイデアの創出につながるのは、とても面白いと感じました。
これからも、使う人が使いやすいWebサイトデザインを考えていきたいと思います。

この記事を書いた人

安原 哲也

安原 哲也

2008年にメンバーズに入社 2022年に医療業界のサイトに携わり一般サイトとの違いに驚く

澤田 陸人

澤田 陸人

メディカルマーケティングカンパニー所属。 22卒入社のWebディレクター職。 大阪府出身。ノリと勢いが売り。

田崎 祥伍

田崎 祥伍

2016年にメンバーズに入社。 大阪出身でノリと勢いのある人と仲良くなりたい。

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