2020.8.24
未経験新卒もUXデザイナーになれるのか?〜新卒がUX MILK編集長に聞いてみた〜
こんにちは!新卒1年目の市来(いちき)です。
私は福岡の文系大学出身で、デザインもプログラミングも未経験で内定者インターンシップでUX MILK編集部に来たとき初めてUX(ユーザー体験)という言葉に触れました。
そんな私が、UXについて勉強し始めて出てきた「未経験の文系大学生も新卒でUXデザイナーになれるのか」を、上司であるUX MILK編集長の三瓶さんにぶつけてみました。
前回の「UXを知ったばかりの私が疑問に思った4つのこと」はこちら
1. UXは全職種に関わる
──UXデザインの考え方を知り、自分がよく使うサービスのUXをもっとよくしたい!という気持ちからUXデザイナーを志す人もいると思いますが、実際にUXデザイナーはどのデジタルプロダクトの制作現場にもいらっしゃるんですか?
三瓶:必ずしもどの会社やチームにもUXデザイナーがいるとは限りません。むしろ国内では「UXデザイナー」という専門職がいるプロダクトチームのほうが少ないと思います。ただ、UXデザイナーがいないからUXデザインができていないかというと、それは違います。UXデザインとはユーザーの体験を設計することを指す大きな言葉なので、そういった専門職がいなくても、それぞれの仕事の範疇でUXの向上に向けて取り組みをしている場合が多いと思います。
たとえばアプリを考えてみます。ユーザーがアプリに出会う前の体験、アプリを触っているときの体験、アプリを触ったあとの体験など、UXにもいろいろあります。出会う前の体験であれば、広告やCMを見て、「このアプリはこんなアプリなのかな」とユーザーが体験を想起するところから体験は始まっています。そうすると、マーケターもプロダクトのUXに関わっていると言えますよね。アプリ自体でいうと、デザイナーはビジュアルやインターフェースのデザインをします。情報設計や全体の構造を考えるのは、ディレクターやプランナーであることも多いです。エンジニアは実際にアプリがきちんと動き、エラーが出ないようにすることが仕事です。アプリが期待通りのパフォーマンスを発揮するという点でもUXに大きく関わってきます。
つまりUXデザインは全職種に関わっているということです。
みんながそれぞれ自分の役割でUXというものに向かい合っているから、いいプロダクトができるのです。
──UXは全職種に関わるので、全員がUXを念頭に仕事をすることが理想ですね!
三瓶:理想はチームの全員がUXを考えられることです。ただ、これは組織の大きさやプロダクトの規模、会社の文化などによっても変わります。UXを専属の方が推進するチームもあれば、前述のように皆がそれぞれの範疇で考慮していくスタイルもあるので、一概には言えません。いずれにせよ、UXデザインを皆が理解するのが大事なのは変わりないですが。
2. 組織によって異なるUXデザイナーの仕事
──いまUXについて考えている人の多くが「UI/UXデザイナー」だなという印象を受けます。UIデザインをするよりももっと前の段階からUXを考える必要があると感じました。なぜ多くの方が「UI/UXデザイナー」と名乗っているのでしょうか?
三瓶:たしかにUI/UXデザイナーがいま主流ではあります。WebやアプリにおけるUXの話をするならば、ユーザーの体験というのは画面での操作が大きな割合を占めるので、必然的にUIの占める比率が上がり、グラフィックやUIのデザインをしている人がUXにたどり着くことが多いからだと考えられます。
──関連して1つ気になるのですが、UI/UXデザイナーは、UIデザインもUXデザインも両方しているんですか?
このあたりは組織によって任される範疇はだいぶ違ってくると思いますが、一般的に言えばUI/UXデザイナーはUXデザインのすべてを行っているのではなく、どちらかというとUIの割合が多いと思います。
3. ユーザーと向き合うことのプロフェッショナル
──何をもってUXデザイナーというのでしょうか?ユーザーのことを考えて仕事をしていたらUXデザイナーと名乗れるのでしょうか?
三瓶:これも組織によって様々だと思います。個人的には「UXデザイナー」と名乗っている人がいれば、その方はユーザーと向き合ってものを作ることのできるプロフェッショナルなんだなと思います。
ユーザーインタビューに行ったり、ユーザーを観察したりするノウハウがある人だと認識するし、ユーザーから得た洞察を施策に落し込み、プロダクトとして形にしていく、という一連のことができる人がUXデザイナーなんじゃないかと、個人的には思っています。
4. 未経験の新卒では、まずは軸となる職種に就く
──UXデザインの考え方を知り興味はあるのですが、未経験の文系出身の私でも新卒でUXデザイナーになれるのでしょうか?やはり学生時代に休学したり、専門学校やスクールに行ったりするべきなのでしょうか?
三瓶:UXデザイナーの仕事は、ものすごくざっくり分けるとすれば、ユーザーと向き合うリサーチのフェーズと、そこからの発見を施策やデザインに落とし込んでいくフェーズがあります。
そこにはいろいろな関わり方があり、「デザイナー」の言葉通りUIやビジュアルのデザインをやる人もいれば、そういったデザインはできないけれど、企画やリサーチで参加する人もいます。
現在UXデザインに関わっている人も、最初はなんらかの専門領域から入っている方が多いのではないかと思います。前述の通り、ディレクターやマーケター、デザイナーやエンジニアなど、それぞれの領域でのスキルアップをしていくことで、ユーザーと向き合えるようになっていきます。
最近ではUXデザイナーを新卒から取っている企業さんもありますが、これもまだ少数派だとは思います。デジタルプロダクトにおいては、ディレクター、マーケター、デザイナー、エンジニアなど何かしらの職に就いて、そこで特定の領域に特化したスキルを用いてUXをやりたいのか、あるいはより上流の企画やマーケティングの観点からUXをやりたいのかが分かると、ある程度キャリアパスが見えてくると思います。
5. 心のUXデザイナーを増やしたい
──UX MILKはUXデザインについてのメディアなのでUXデザイナーを増やしていきたいのかなと思っていましたが、UXデザインの概念をもったデジタルクリエイターを増やしていきたいということでしょうか?
三瓶:基本的にはUXデザインというラベリング自体には、さほど興味はありません。別にUXデザイナーと名乗ってもいいと思うし、名乗らなくたって全然いいと思っています。UXデザイン、人間中心設計、HCDなど、色々な言い方がありますが、そういうマインドでみんながものづくりできれば、なんだっていいと思っています。ですから、UX MILKでは心のUXデザイナーが増えたらいいなと思っています。
──最後に、いま読んでくださっているUX初心者へ、メッセージをお願いします!
三瓶:UXデザインはどんな職種の方にでも関係のあることです。ものづくりをする人には全員関係があることですし、怖いと思ってほしくないし、みんなに自分ごとだと思ってほしいです。「デザイン」という言葉が付いてしまっているので、ちょっと敬遠してしまうかもしれませんが、その必要も全くありません。プロダクトを作る人みんながUXを考えるようになれば、よりよい世界になっていくと信じていますので、みんなで頑張りましょう。
──UXデザイナーだけがUXについて考えればよいのではなく、どの職種にもUXの考えは必要ですね。
今日はありがとうございました!
この記事を書いた人
三瓶 亮
UX MILK編集長。株式会社メンバーズ LXグループ所属。LX(学びの体験)にまつわるイベントやコミュニティの企画・運営などをしています。ゲームとパンクロックが好きです。
市来 里穂
2020年4月入社。ピープル&カルチャー室 LXグループのディレクター。オンラインイベントやワークショップなど、クリエイターがお互いにスキルを学びあうためのさまざまな学びの場を提供しています。