駆け出しUXリサーチャーの半年をKPTで振り返る

こんにちは、EMCカンパニー2021年新卒の井上です。
本ブログにて以前執筆した記事では「今年から本格的にUXデザイン周りの業務に携わり始めた」などと名乗っていましたが、今年の1月からUXリサーチャーとなり、現在はクライアント先で3,4人の少人数チームを組んで小規模なユーザビリティテストをひたすら回しています。
未経験スタートということもあり、がむしゃらにトライアンドエラーを繰り返しながらここまで突き進んできておりました。
リサーチ活動がひと区切りついたので、今後UXリサーチャーとして活動を始める人、同じく駆け出しの人向けにこれまでのリサーチャー活動の振り返りをKPT法を用いて試みます。

リサーチ活動のざっくり概要・環境

被験者は別プロジェクトの社員5人程度、テスト計画からレポート作成まで1ヶ月強と短期間で回す小規模のユーザビリティテストをメインに活動していました。
デザインの現場に常駐するのではなく、ユーザビリティテストが必要になったときに依頼を受ける組織体制です。
タッチディスプレイがあるプロダクトのソフトボタンの配置といったUIデザインがテスト対象の中心で、場合によっては機能のニーズなどの価値検証の範囲までがテスト対象となっていました。現案件では機能ごとに区切ってそれぞれテストをしています。

テストの大まかな流れ

①テスト依頼主にテストを通してどのようなことを判断したいのかなどをヒアリングし、テスト設計を行う
②テストで被験者が操作する際に支障が出ない最小限の機能をそなえたプロトタイプをプロトタイプツール「ProtoPie」やデザインツール「Figma」で作成
③対面でテストを実施する場合は、実際の環境に近い状況でプロトタイプを操作してもらう。オンラインの場合はProtoPieやFigmaはブラウザで操作できるので、被験者の方のパソコンで操作してもらい、その様子をオンライン会議ツールで画面共有してもらう。
④テスト後、被験者の発言をまとめながら、分析を深めていく
⑤レポートにまとめる

使っているツールについて

ミーティングのメモからテスト計画やテストの記録、レポート作成などは基本的にホワイトボードツール「miro」に集約させています。UIデザインなど画像を多用するときには非常に便利です。
オンラインでテストを実施する場合、専用のサービスなどもありますが、社内実施ということもありWeb会議ツール(TeamsやGoogle meet)を使用していました。TeamsとGoogle meetでは、複数のユーザーが同時に画面共有できるGoogle meetのほうがオンラインテストにおすすめです。Web会議ツール全般のデメリットは、コマ飛びなどが発生する場合が多く、プロトタイプをパソコン上で実際に被験者さんに操作してもらい、その様子を画面共有してもらうとなると、あまり細かい操作までは見られない点です。予算や要件、プライバシー保護のルールに応じて、ツールの準備や録画・動画の加工が必要だと感じます。

本題のKPTで振り返り

以下のKPTは私自身の案件の環境や体制の場合での内容であることをご留意ください。

KEEP やって良かったこと、学んだこと

・リサーチ手法の型を作り改善し続ける
短期間でたくさんテストを回すとなると、「さて次はどうしようか」を考えるゆとりがあまりありません。そこである程度の型があることで、経験が浅い状態でも2回目以降は戦力としてすぐに動きやすく、また行動の答えがある程度明確なため自信と多少の心のゆとりを持って行動することができ、新たな発見も多く得られたのではないかと思っています。
また、あくまで型ですから「こうしたほうが良かったな」をすぐ次のリサーチに改善として型に組み込むことができ、リサーチ手法自体も実験的に取り組めたのは積極性・関心を高く維持した活動につながったのではないかと感じています。

・テストを依頼主と共に設計・準備していく
依頼主にもよりますが、「なぜユーザビリティテストをしたいのか」自体が漠然としているケースがよくありました。 リサーチャーの役割は、依頼主が用意したリサーチクエスチョンに対する回答を示すためにテストを計画・準備するだけではなく、どういったことを明らかにしたいのか・どういった部分が気になっているのか(仮説)・結果が分かったらどういった判断につながるのか、などを一緒に整理していくこと、また場合によってはデザイン現場にいない身であることを生かして客観的な意見をお伝えしてデザインを一緒に検討していくことだと学びました。

PROBREM 課題に感じていること

・質問の掘り下げ力
ユーザビリティテストのため、事前に質問項目はきっちり作ってから挑みますが、テスト後に分析作業をしていると、「どうしてこの被験者さんはこう思ったんだろう…」といったような疑問が後から出てきてしまうことが多々ありました。

・オンライン実施の際の観察力
オンラインだと対面ではないことからどうしても回線の都合や、ツールのスペックの都合で被験者さんの表情や、操作画面がはっきりと読み取れないことが多々あります。また、操作の様子と表情を同時に見ることが難しくどちらかに気を取られていて重要な部分を見逃していた…ということも。

・必要な情報を聞き出す力
リサーチャーにユーザビリティテスト実施の依頼が来るまでに、そのテスト対象の機能がどのような過程を経て今のデザインになっているのかなどの背景が全く見えず、また依頼が来てからその機能がどういったことができるのか、どういう画面遷移をするのか、などをインプットしていく流れだったので、依頼主が悩んでいる真の理由をちゃんと理解するには依頼主から様々な情報をうまく引き出して咀嚼していく必要がありました。
しかし、依頼主も説明がうまく、自分が何に悩んでいるのかをしっかり言語化できているとは限らないので、リサーチャーにうまく聞き出すスキルが求められますが、それがなかなかに難しかったです。これはインタビューに必要なスキルとイコールだと思うので、リサーチャーとは人から話を聞き出して整理するのが上手くないといけない職種なんだなあと常々感じます。

・プロトタイプを準備するスキル
リサーチャー専門として入っていることもあり、現状デザインスキル・デザインツールのスキルがないため、デザインそのものを作れないにしても、プロトタイプの遷移などの修正もデザイナーさん任せとなってしまい、リサーチャーは締め切りの管理のみ、デザインができ上がるまでやれる作業がない…という場合もありました。

TRY 今後やっていきたいこと

・質問の掘り下げ力のTry
これは経験を積み上げていくしか方法はないかもしれませんが、「自分たちが知りたいこと」を軸に、それをどうしたら知れるのかを常に考えながら質問ができるよう被験者さんの話をしっかり聞くことが必要だと感じています。また、「自分たちが知りたいこと」も、それを知ってどうするのか、どこが懸念ポイントなのかなど細かいところまで自分の中に落とし込めないとなかなか質問も湧きにくいように思うので、理解の解像度もあげていくことが重要だと思います。

・オンライン実施の際の観察力のTry
オンライン会議ツールの画面の配置を自身・配信を見ている人が見やすいように改善したり、事前にどういったところが見るべきポイントなのかを整理する必要がまだまだあると感じています。
また、配信時の画質が粗かったり、音声が聞き取りづらいと分析作業時にかえって時間がかかってしまうなどのデメリットも発生するので、録画(対面の場合はカメラを使用しての撮影)録音のクオリティをあげるための配線などの知識もある程度必要になってくるため、機材の整備や最低限の映像の知識などは常に学ぶ必要があると思います。

・必要な情報を聞き出す力のTry
リサーチャーというよりは、働くひとに共通したものだと思いますが、主体性と目的を常にもってテストの依頼主とコミュニケーションを取れるようになることが今後の課題です。また、依頼を受けたことだけを淡々とこなしていくだけではなく、依頼主もしっかり巻き込んで、依頼はされていないけれど検討したほうが良いことまで拾って提案できるところまでできると、UXリサーチャーとしての存在意義が果たせるのかなと思っています。

・プロトタイプを準備するスキル
これはもう空き時間にガンガン手を動かしていくしかないところですね。
ディレクターやプロデューサーなど、実際にモノをつくるクリエイターに作業を依頼する場の職種に共通して言えることだと思っていますが、ツールやデザインなどの最低限のスキルを実際にモノづくりに活かすのではなく、クリエイターとの共通言語として使えるように身に着けておくことが重要だと感じています。
最低限の知識があれば、その作業がどれくらい大変なことなのかなども予測を立てて話ができますし、プロトタイプ作成の話に戻ると、リサーチャーも待つだけではなく自分たちが必要なものがすぐに準備できるので、作業をどんどん進めることができるようになります。

おわりに

未経験スタートの初回振り返りということもあり、基礎的なところのオンパレードだったかもしれませんが、プロジェクト独自の気づきが共有できていたら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

この記事を書いた人

井上 奈緒

井上 奈緒

2021年4月入社。第1ビジネスユニットアカウントサービス第4ユニット所属のUXリサーチャー。 社内報MEMBUZZの編集委員。

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