2021.9.27
アパレル業界が抱える環境問題と解決に向けた事例3選
メンバーズでは、ソーシャルクリエイター(※)による持続可能な社会の実現のため、社員による社会課題に関するインプットとアウトプット活動を行っています。
今回は「アパレル業界の環境問題」について、デジタルやクリエイティブの力で解決に向け実践している事例をご紹介します。
※ ソーシャルクリエイター
デザイン思考を持ち、ビジネスの推進や制度設計、アウトプットを通じて社会課題の解決を図ろうとするクリエイター(職人)志向性の高い人材のこと。
アパレル業界の問題
サプライチェーン全体での環境負荷の実態や全容の把握が困難である。
アパレル業界では原料調達から紡績、染色、裁断・縫製・加工、輸送などサプライチェーン全体の工程が長く、その各工程で様々な環境負荷が生じています。そして、各工程で異なるサプライヤーが存在し、それぞれで情報開示が行われているため、環境負荷の全体把握が困難になっています。
服の過剰供給による大量生産・大量消費。
1990年代後半から世界中でファストファッションブームが拡大したことを機に、アパレル業界では季節ごとに移り行くトレンドに合わせた服の大量生産が主流になりました。また、消費者意識も「服はトレンドごとに買い替えるもの」と認識され、服の短サイクル化へと繋がっています。
このような大量生産と大量消費の組み合わせにより、服の大量廃棄が問題視されています。
製造過程で発生する資源・エネルギーの大量消費や、海洋汚染・水質汚濁の問題。
アパレル業界は国連貿易開発会議(UNCTAD)により、世界第2位の環境汚染産業との指摘を受けています。
例えば、アパレル業界では毎年、約930億㎥もの水を使用し、約50万トンものマイクロファイバー(石油300万バレルに相当するプラスチック素材)を海洋に投棄しています。また、CO₂排出量を見ても、世界の約8%を占めており、これは国際航空業界と海運業界を足したものよりも多く排出しているのです。
課題解決のための事例
サプライチェーン全体で環境負荷を正確に測定することを目的とするツール『Higg Index』
サステイナブル・アパレル連合(SAC)及び技術パートナーであるHigg社によって共同開発されたツール『Higg Index』は、アパレル業界共通のサステイナブル評価指標の役割を果たします。ツールとしては大きく「Higg Product Tools」「Higg Facility Tools」「Higg Brand Tools」の3種があり、各用途に合わせた活用によってサプライチェーンの各工程で排出される環境負荷を正確に測定することを実現します。
https://higg.com/tools-services/
50万点以上の蓄積されたファッションスナップ画像からAIでトレンド分析を行うサービス『#CBK forecst』
『#CBK forecst』は余剰在庫を削減することを目的としています。SNSやECサイトなどから収集した50万点以上のファッションスナップ画像をAIで解析し、定量的な分析データに基づく適切なトレンド推移が予測できます。これにより、服の発注量と在庫量が適正化され、服の大量廃棄問題への貢献に繋がるのです。
https://encyclopedia.cubki.jp/services/forecast/
服のシェアリングによる循環型プラットフォーム『MECHAKARI』
『MECHAKARI』は月額定額で会員登録した方を対象に、服のシェアリングができるサービスです。(株)ストライプインターナショナルが展開するearth music&ecologyをはじめとする人気ブランドの新品だけをレンタルでき、返品時はクリーニング不要であることや、気に入った服はそのまま買い取ることもできるといった特徴があります。
服を頻繫に買い替えるのではなく、シェアリングによって1着1着を無駄なく循環的に利用することで、服の過剰生産に貢献できる持続可能な新しいファッションビジネスになります。
https://mechakari.com/
個人でもできること
- 服を選ぶ基準として単に自分が好みのものを選択するのではなく、「愛着を持って長く着用できるか」や「天然繊維や再生繊維といった環境負荷の少ない素材なのか」という視点を持つ。
- 着用機会が少ない服は捨てるのではなく、古着としてリユースショップやフリマアプリで売ることや、家族や友人へおさがりとして着用してもらうようにする。
まとめ
いかがでしたか?
アパレル業界はサプライチェーン全体で多様な環境問題を抱えています。しかし、多くのアパレル企業やデジタル企業はそのような現状を踏まえて、最新のデジタル技術を活用したサステイナブルな取組みを行っています。このような様々なサステイナブルな取組みを続けていくことが、持続可能な循環型社会の実現に繋がるのではないでしょうか。
また、消費者としてもアパレル業界が抱えている環境問題を知り、服を長く着用できるように工夫していくことが重要です。
デジタルやクリエイティブの力で社会課題を解決するために参考になれば幸いです。
参考、参照
https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/
https://www.greenpeace.org/japan/explore/fashion
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/32952/
https://higg.com/tools-services/
https://encyclopedia.cubki.jp/services/forecast/
https://mechakari.com/
この記事を書いた人
田中 勇輝
2021年にメンバーズに新卒入社。現在はディレクター職として、webサイト運用におけるディレクション業務を担当。ファッションが好きで、学生時代にはアルバイトとして実際にアパレル販売員を経験したこともある。